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と、加藤巡査は無意識に汗の滲み出た額のあたりを指でこすりながら、心配さうに大小の焚火を見やつた。彼の声はしはがれていた。
黒い影はぴよこりとお辞儀をした。それから台所から射す光りの中に全身を現すと、それを眩しがつているとも照れたとも見える表情を浮べながら近づいた。
練吉の額は今青いと云ふより磁器のやうな冴えた白さに変つていた。目瞬きはぴつたりととまり、線を引いたやうな切れ目が深く長く、宛あたかも部厚い眼鏡そのものに入つたヒビ割れのやうに見えた。そして、
この分では永くなりさうだと思つて、房一が腰を浮かし気味にすると、
日々は平凡に単調に過ぎて行つた。
「鬼倉といふのは女を二人置いとるさうぢやないか」
練吉は軽く頭を下げながら、相手の房一がいきなり直立不動のやうに足をそろへたのを見た。
と、大声で云ひ聞かせた。
「いや、私はすぐこの近くで医者をしとる、高間といふ者ですが」
「なんですよ、あんまり貴方あなたの評判がいゝもんですから、さういふ方ならぜひ一度自宅うちでも診ていたゞきたいと思ひましてね」
「どこだ、どこだ。もう消えたのか」
練吉は一人で感心し、それでも足りないと見えて、房一に呼びかけた。
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