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    「チブスじゃないです。医者は何とか言っていたですが、まあ看病疲れですな。」

    「はゝゝ、でもカワラケにはちがひない、それがかうひよつとね」

    練吉はもうさつきから殆ど一人でぐいぐいやつているにもかゝはらず、むしろ青い顔だつた。

    房一は傷を調べにかゝつた。後頭部にもあつた。身体にへばりついたシャツをはぎとると、背部に最もひどい傷があつた、それは紛まがふところのない刃物による刺傷だつた。新しい血がはぎとられたシャツの下から、瞬またゝく間にふき出し、滴したゝり落ちた。

    「おう、これか」

    印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。

    けれども、私がたいがい徹夜で仕事しており、深夜に入浴したがることを知っているので、気の毒がって、たいてくれる。八時ごろ四十五度ぐらいにしておくと、石の浴槽は冬でも却々なかなか冷却せず、十二時ごろは四十一二度、二時三時でも、三十八度ぐらいである。私は深夜に二度入浴して、頭を休め、冷えた全身をあたためることができる。私はタンサンガスに弱く、たちまち頭がしびれるので、せっかく炭火で室内をあたためても、窓をあけてガスをだすから、常に寒い思いをしていなければならないのである。

    「――?」

    「さうですが、それはさうにちがひないが――」

    わきから又誰かが冷かした。

    自動車が動き出した時、練吉は唇のはしをびりびりさせ、あの切れ目の顔に何かしら水をかけられたやうな表情になりながら、

    「もう着てみましたか」

    「さうです、小倉組の方ですな」

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