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    「どうぞよろしくお願ひします」

    今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。

    「あいつも、君んとこと同じで、子供ができたらしいよ」

    「をかしな男だな」

    「それは惜しかつたですな。私などとちがつて学資の心配はなかつたでせうし」

    練吉若夫婦は診察所の二階を居部屋にしていた。そこと正文夫婦の住む母家おもやとの間には一見して判る気風の相違が現れていた。正雄はそこへ近づかないやうに云ひふくめられていた。

    徳次はしばらく考へていた。

    云ふなり又思ひ出したやうに玄関へ上つて行つた。

    鬼倉は一瞬、相手を地着きのごろか何かと思つたらしい、一種の殺気をひらめかした。

    「私共は、これも(練吉を指して)この町の医者です。実は火事だといふから駆けつけたので。聞けば、演習だといふことですが、それなら前もつて町役場なり駐在所なりへ通知があるべき筈だと思ひますが、それはなさつたでせうな」

    と、新聞紙から眼をはなした練吉は、一寸正文の邪魔になりさうな足をひつこめただけで、別に行儀のわるい姿をなほさうともせずに、又新聞を持ち上げながら、

    「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」

    と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。

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