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    房一の竿に最初のやつが掛つた。

    房一がそこへ出るのと、さつきの二人が表から入つて来るのと同時だつた。

    練吉はそれなり黙つた。

    だが、道楽息子にはちがひなかつたが、それだけでは済まないものがあつた。正文はそのはつきりと理解できないこみ入つた或る物が、単にあらゆるものを切りすててもなほ残る、あの単純な愛情だといふことには気がつかなかつたが、漠然とそれに惹かれた。

    「何をするかつ」

    「何でもいゝから早くしてくれ。路をまちがへて大廻りしちやつたんだ」

    今泉は一寸いやな顔になりかけたが、

    その時、ふいに或る戸口から一人のひよろ長い男が、一度敷居につまづいてそのはずみで飛び出した工合に、明い路上に出て来た。帯がほどけてる、と見えたが、さうではなかつた。あんまり着物の前がはだかつて、したがつて腰から後裾にかけて長く引きずつたやうになつていたせいだらう。

    と、ふしぎに叮寧な言葉使ひになりながら、鼻汁と埃とがごつちやになつて真黒になつた子供の方にしやがみこんで、家の方へ向きを変へてやる。

    「訴訟があるさうで、面倒なことですな」

    小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。

    「これからどちらへ?」

    と、相沢は口ごもつた。

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