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彼が冠をとると、円味のある顎肉には紐の痕が紅く残つていた。
六
「ね、どこも悪くない。だが、その丈夫な身体の中に虫が巣をつくつとる。いゝかね、心臓病とか腎臓病とかいふやうなものではない。虫を駆除する、つまり身体から出してしまへばあんたの身体はもと通りぴんぴんして来る。悪い虫だが、とつてしまへばよいのだから、他の病気よりは性質はいゝと云ふことになる。――判つたかね」
今日見るその顔は、色こそ黒かつたが、地蔵眉の、眼もそれに釣り合つて細い糸を引いたやうにやさしかつた。だが、その声には何かきつぱりした、率直さが感じられた。
突然だつたので、房一は思はずその醜い顔に紅味をうかべながら、軽く頭を下げた。その拍子にごく自然に眼玉と真向ひになる位置を外した房一は、さつきから気を引かれていた馬の方をちよいちよい眺めやつた。
「いつから――?」
「あれですかね、やつぱり自分で歩かなくちやいけませんかね」
と、徳次は叮寧にならうとして一種奇妙な言葉づかひになりながら、
練吉は小学校時分のことを思ひ出したのかふいにをかしさうに笑ひ声を立てた。
と、小谷はひとり言にしては大きい声で云つた。が、代りがないので又水の中へ放つた。
この男が入つて来たとき、徳次の仲間だつた二人の馬喰は急にぴたりと話をやめた。そして、落ちつきのない眼で時々そつと男の方をぬすみ見た。男はぢろりと一瞥した。それは荒い皺が隈取りのやうに走つている顔だつた。だが、それきり三人の方を見ようとはしなかつた。
半ば感心し、半ば疑はしさうに、彼は指を自分の眼に向けてみた。
「なに?」
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