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    その住居の端々はしばしにまで行きわたつている潔癖さは、同時に大石正文夫妻の年来の好み、その生活の信条といつた風なものをも漠然と現はしていた。

    「なに、訴訟?」

    と、微笑しながら頭を下げた。

    さう云ふと、男は入口に待つていた印袢纏の背の高い男とつれ立つて、高間医院を出て行つた。

    と、誰かが大声で叫んだ。

    云ふなり又思ひ出したやうに玄関へ上つて行つた。

    「何んの。面倒だからこのまゝ行かう」

    道平は納得したやうにうなづいたが、又ゆつくり身体を坐りなほすのと一緒に、

    「もう、だいぶようなつたですわ」

    間もなく房一は別れを告げ、庭前で又馬の前に立つて二三の話をし、相沢の家を立去つて行つた。相沢のやうな家を患家に持つことは、十軒もの小患家を得たに匹敵すると、ひそかに満足しながら。そして、今日のもてなし方から考へると、医者として十分好意を与へたにちがひない、といふことにも満足しながら。

    「はあ」

    これがこの小さな字である。

    見たことのない顔だつた。患者なら玄関から来る筈だ。

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