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「へえ。――ズブツとね」
そこへ房一が帰つて来たのだ。盛子は横坐りの所を見られまいとして慌てて立上つた。
「ふうん」
「捕虜が内地へ送られるさうだよ」
「いつたい、今日は何ごとかの」
半シャツの男は房一の前に来て、はじめてお辞儀らしい格好をした。
と、相手は慌ててその筒抜けな声を庫裡の居間に向けて放つた。
「半之丞の子は?」
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」
庄谷は自分よりは高い相手から見下されるのを避けるやうに少し遠のくと、房一の改まつた服装を胸から下にかけてぢろぢろと見た。
「さうか。うちの方では山車だしを引いて出るさうだ。それから、みんな紋付に羽織袴といふことだの」
と、その小柄な身体から出るとはとても思へない、幅のある、濁だみ声で云つた。
「本当も本当でないもありやしませんよ。財産譲渡無効、その返還を請求したのだよ」
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