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    「どういふことです、わたしにはさつぱり――」

    房一はふと自分に返つて訊いた。

    房一がそこへ出るのと、さつきの二人が表から入つて来るのと同時だつた。

    「小倉組といふと、下の工事場の方ですな」

    房一はすかさずさう口にすると、低く鹿爪しかつめらしいお辞儀をした。どうも、これでは少し固苦しいかな、と自分の声を自分で聞きながら。彼はいくらか汗ばんでいるやうな気がした。慌あわてないで、さう自分に云つた。

    「いや、どうも。――この男は私のごく懇意な者ですが、酒癖がわるいので、まあ今夜のところは大目に見てやつて下さい」

    房一は、行儀よくまだ冠を頭にのつけたまゝの小谷と練吉と並んで板切れの上に坐つていた。

    云ひながら、道平はこれ又大いに気にかけていたことがあつさり片づけられてしまつたので、いくらか不服でもあり、手持無沙汰でもあるといつた様子だつた。

    「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」

    と、房一は練吉の顔を見て思ひ出したらしく、

    「いや、あの晩の、ほんの三二日前です」

    突然だつたので、房一は思はずその醜い顔に紅味をうかべながら、軽く頭を下げた。その拍子にごく自然に眼玉と真向ひになる位置を外した房一は、さつきから気を引かれていた馬の方をちよいちよい眺めやつた。

    「ふうん。気楽な身分だね」

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