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    房一は彼等の姿が消えてからもしばらくの間、ぼんやり元の椅子に腰をかけて、たつた今彼等がそこを曲つて行つた入口の土塀、それで一所だけ区切られた表の道路、その向ふに稍高手になつた畑地、といつたやうな物を漠然と眺めていた。

    房一は白シャツを着た小柄な大工と並んで立ちながら、玄関を眺めて云つた。

    「今日はえらい早いお帰りだね」

    徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。

    「途中から――?」

    「患者さんですよう」

    「どうぞ」

    「さう。――いゝやうだ」

    「おい、お茶を入れてくれ」

    小谷はしばらく放つていた糸を手許にひきよせて、水の中の鮎を眺めながら云つた。

    房一はそれに目をとめていたが、急に強い口調で、

    「笹井?――御隠居さんが云つたのかい」

    「大きいかね」

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