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と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。
「あんまり、ぢつとしとつてもな、身体が生なまに、なるもんぢやから」
「いゝ恰好で!」
「さうですよ、あんた。銅の値が上つたさうですね、昨日も九州の方から礦山師が赤山を見に来たんです。あの山ぢあね、随分家屋敷をなくした者があるんですがね」
「まあ、――上の町の大石さんとこ位は行つとくのもよからうが」
「怪我人ができたのかね」
「捕虜が内地へ送られるさうだよ」
河原町の部落がそれに沿つて長く伸びているあの川は、この附近では単に吉川と呼ばれているが、町の少し上手では二つの支流を合したものとなつているので、それにも各々ちがつた名がついていたが、こゝから更に下流になると、はるか下手の河口にある町の名をとつて吉賀川となるのである。
「あ、いゝ、いゝ。なんでもありやしない。今すぐ行かう」
たとい健康の人間でも、往復の長い時間をかんがえると、一泊や二泊で引揚げて来ては、わざわざ行った甲斐かいがないということにもなるから、少くも四、五日や一週間は滞在するのが普通であった。
「さうかね、梨地へ行くんなら、やつぱりこゝを渡つた方が近道だ。井出下の渡しはもうないからね」
右手の台所の方ではしきりと物音がしていた。道平より先に朝早くから手つだひに来ている房一の義母と、まだ結婚して間もない盛子とが土間を掃いたり戸棚を拭いたりしているのだつた。
「別に惜しいほどのことではありませんよ」つづけて、ふいに調子を変へると、
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