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    二人は自転車をひきずつたまゝ近よつた。

    さう呟きながら、下手を眺めた。

    「閉口でしたな」

    「さうぢや」

    それは、やつぱり何となく「役所」臭かつた。

    「ね、お母あさん。これ、こんなに汚いでせう。もう少し……たいんですけど。……でせうねえ」

    稍意地の悪い、きびしい調子であつた。

    とにかく、それは遠い向ふで起つていることだつた。対岸の火事を見物するやうなものだつた。

    きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして

    こういう不便が多々ある代りに、むかしの温泉宿は病を養うに足るような、安らかな暢のびやかな気分に富んでいた。今の温泉宿は万事が便利である代りに、なんとなくがさついて落着きのない、一夜どまりの旅館式になってしまった。一利一害、まことに已やむを得ないのであろう。

    貰った方でもそのままには済まされないから、返礼のしるしとして自分が携帯の菓子類を贈る。携帯品のない場合には、その土地の羊羹ようかんか煎餅せんべいのたぐいを買って贈る。それが初対面の時ばかりでなく、日を経ていよいよ懇意になるにしたがって、時々に鮓すしや果物などの遣やり取りをすることもある。

    「へえ、――どうもごていねいなことで――」

    富田は庄谷の方に向きなほつた。

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