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    「もう着てみましたか」

    「さうかね、梨地へ行くんなら、やつぱりこゝを渡つた方が近道だ。井出下の渡しはもうないからね」

    「やあ、来てますね」

    「それが、その、来ないわけがあるのさ」

    彼はもう少しで最も善い友人に向ふやうに考へごとを打ち明けるところだつた。

    「さうさう、先だつてはお加減がわるかつたさうですが――」

    「やつぱり徳さんが多いね」

    云ひながら、腹帯の中からまるで金入れとは思へない位に大きな蟇口をとり出すと、十円札を何枚かつかんでいた。そして、ろくに返事も聞かないで房一に押しつけた。

    このポインタアの雑種は、房一の往診にはどこへでもついて来た。いゝ路づれだつた。

    今泉は面喰つてこれも徳次の眼の中をのぞきこんだ。二人の間には恐しく判りにくいものが突然はさまつたやうに思はれた。

    「いや、いや」

    第四章

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