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あるとき一人の女の客が私に話をした。
今泉は一寸いやな顔になりかけたが、
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」
「脚気の方は?」
盛子は房一からさういふことを聞かされていたので、往診に出掛ける時には彼女の方から念を押したほどだつた。房一は四時までには帰ると答へた。だが、もう五時過ぎだつた。そして、日が落ちてからの空気は、まるでわざと盛子の気を落ちつかせまいとするかのやうにどんどん暗くなり、冷えて行つた。
だが、さう云へば、一歩いちぶ非の打ちやうのない正文に練吉のやうな息子ができたこともふしぎにちがひない。事実、当人の練吉さへ、自嘲めいて時々さう口にするのであつた。
房一はまだ考へ深さうにしていた。
「あれらしいのよ」
「もう、だいぶようなつたですわ」
あのことだな、と房一は思つた。訊いてどうかな、とは感じたが、相手があまりさつぱりしているので、
私は朝と夕方と真夜中に入浴する。朝、ぬるいうちに私がはいり、そのあと熱くして家族がはいる。それをほッとくと、夕方、私には手頃のぬるさとなっている。
「いや、これから往診に行くところだ」
この家はこの娘のためになんとなく幸福そうに見える。一群の鶏も、数匹の白兎も、ダリヤの根方で舌を出している赤犬に至るまで。
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