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と、酒が少し入るとすぐ真赤になる性質の房一は、その紅黒い顔を火照ほてらせ、円い身体を持扱ひかねたやうになつて訊いた。
それは言葉にするとこんな風なものであつた。
盛子は風呂場の入口で上はずつた声を出した。
相手は何か答へたらしかつたが、房一のところへは聞きとれなかつた。今まで静まりかへつて事の成行を見まもつていた人だかりが急にどよめいたからである。そして、柵の向ふでは、相手になつている男のうしろに出張所側の連中がかたまつていた。その長身の男も今更後へはひけないと云つた様子だつた。その時、房一の肩をまだ押へつゞけていた練吉の手が痙攣するやうにふるへた。
「さあ、殺せ。――うむ、え、さあ。――え、え」
それは一尺近い美事な鮒だつた。だが、三匹きりなかつた。いかにも少いと徳次は路々思つて来た。さう思ふと、この鮒が本当よりもずつとちつぽけにさへ見えて来たのである。
と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。
「その姿は見えないのですが……。」
「さあ、どうぞ。ずつとお通り下さい」
「さうです、小倉組の方ですな」
徳次は急に目くばせをした。
「え、何だつて、徒歩てくで通るかつて?」
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