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    徳次はすつかり感心したとも、又その反対ともとれる云ひ方だつた。

    徳次はやつと安心した。さう云はれてみると、なるほどちつとは大きいかなと思つた。持つて来た甲斐があるといふものだつた。

    「わたしはね、こいつは割れさうだなと思つたもんでね」と、笏で自分のはいている木沓を指して、

    と、云つた。

    「お髯がなくなりましたわ」

    「いや、どうも」

    「はあ」

    と、房一はひとり言を云つた。

    「あなたは御存知ないんですかね」

    酔つぱらふと家にぢつとしていられない性分だ。ひる間だらうと、夜ふけ近からうと、ふらりと表に出かける。たまに、子供が、

    一座はしづまり返つていた。何か緊迫した気配があつた。――とにかく、それは予定の中には入つていなかつた。こんな風に突然誰かが立上り、荒々しい声を張り上げ、何を云ひ出すか判らないのにぢつと膝をついて聞いていなければならぬとは!

    口を切つたものの房一は頭の中でとまどつていた。あんなに考へていた言葉が今急にどこかへ消えてしまひ、何を云ひ出したのか後をどう云つたものか判らなくなつてしまひさうに感じた。彼はかすかに汗ばみ、そのどちらかと云へば醜いむくれ上つた眉肉や厚い唇が力味を帯び紅ばんで来た。

    男は語尾に力を入れて、房一の眼の中をのぞきこんだ。

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