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「へーえ」
「しかしお松の生んだ子はほんとうに半之丞の子だったんですか?」
見る見る癇癪かんしやくを起しさうになつた練吉は、その時ふと或ることを思ひ出して黙つた。
「はあ、見て参ります」
房一はさつきから自然と聞いてはいたが、事は初耳だつた。
「あの訴訟はどうなつたのかね」
房一が声をかけて回転椅子を押しやると、
練吉の額は今青いと云ふより磁器のやうな冴えた白さに変つていた。目瞬きはぴつたりととまり、線を引いたやうな切れ目が深く長く、宛あたかも部厚い眼鏡そのものに入つたヒビ割れのやうに見えた。そして、
徳次はきまり悪げに、しかし、又あのきよろりとした眼つきにかへりながら云つた。
川沿ひに細長く続いている河原町の通りは、地勢のせいでゆるい下り勾配をなしていた。所々で屋並みが切れて、そこには茶畑があつたり、空樽が乾してあつたりするかと思ふと、次の空地にはどこの家で使つているのか判らないやうな大きな井戸がその円く肥つた腹のやうな焼物の縁をたゞあつけらかんと日に照されていたりした。
熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。
「もうそんなにおよろしいんですの?すつかり御無沙汰していました。ほんとうに!よくおいでになれましたわねえ」
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
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