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「さつき、はじめは、はてな、見慣れない男がいるな、と思つたくらいですからな」
「うん、何かア」
「まあ、のみなさい」
彼は先だつて房一から全快祝ひに贈られたセルの上下を、仕立下したばかりのものを着こんでいた。夏からふた月あまり寝こんだとは云へ、日焼けの浸みこんだ黒い皮膚の色は容易にとれないと見えて、今もそれが真新しいセルの、明い地色と際立つた対照をなしていた。
と、房一はぐいと身体を起した。それがあまり突然だつたので、傍にいた徳次は慌てて立ち上つた。
「その首はどんな顔をしていた」と、友達のひとりが訊いた。
「何を云うとる。すまじきものは宮仕へ、といふぢやないか」
「ね、どこも悪くない。だが、その丈夫な身体の中に虫が巣をつくつとる。いゝかね、心臓病とか腎臓病とかいふやうなものではない。虫を駆除する、つまり身体から出してしまへばあんたの身体はもと通りぴんぴんして来る。悪い虫だが、とつてしまへばよいのだから、他の病気よりは性質はいゝと云ふことになる。――判つたかね」
神経質な目ばたきをしながら、練吉は口早に引きとつて云つた。
「畜生、おぼえていろ。」
「このまゝでは責任者を出さなくてはならなくなる。手落ちは向ふにあるとしてもですよ」
房一はその玄関土間に足を踏み入れて、
「やあ」
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