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もともと口下手ではあつたが、まだ舌がもつれる風で、一口ごとに息をついて云つた。
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
「何をするかつ」
「さうだ、君はあの時の射撃大会に出たさうだね」
「それから、あれだが、今までよう訊かなんだが、――あれは、どうしたもんかの、大石さんの方は?」
一座はしづまり返つていた。何か緊迫した気配があつた。――とにかく、それは予定の中には入つていなかつた。こんな風に突然誰かが立上り、荒々しい声を張り上げ、何を云ひ出すか判らないのにぢつと膝をついて聞いていなければならぬとは!
「やっぱりチブスで?」
しかし、さういふ身体の忙しさより何よりこたへたものは、房一にとつては肉親の大病を診察するといふはじめての経験だつた。
練吉の額は今青いと云ふより磁器のやうな冴えた白さに変つていた。目瞬きはぴつたりととまり、線を引いたやうな切れ目が深く長く、宛あたかも部厚い眼鏡そのものに入つたヒビ割れのやうに見えた。そして、
房一は彼等の姿が消えてからもしばらくの間、ぼんやり元の椅子に腰をかけて、たつた今彼等がそこを曲つて行つた入口の土塀、それで一所だけ区切られた表の道路、その向ふに稍高手になつた畑地、といつたやうな物を漠然と眺めていた。
と、いきなり突きを喰はされた練吉は、神経的にさつと青ざめながら、反問した。
二人は自転車をひきずつたまゝ近よつた。
と、それまで鹿爪しかつめらしい表情をくづさずにいた仲買の富田が、突然半畳を入れた。どつと立つた笑ひ声で、聞きとれなかつた者までがふき出した。
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