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    房一は目顔で笑ひながら何度もうなづいた。やつと安心したやうに、徳次はしばらく見送つていた後で、大股に自分の船の所へもどつて行つた。

    「それからね」

    「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。

    房一はその時、これは思つたより以上に面倒だな、と感じた。この場だけを円めればいゝといふわけにはゆくまい、云ひがかりをつけられるかもしれぬ。それから、徳次をこの場から去らせても後で鬼倉の配下の者に狙はれるかもしれぬ、といふことを突嗟とつさに考へた。彼は腹をきめた。そして、相手の顔に目をつけながらゆつくりと答へた。

    「よからう」

    「いゝよ、君。帰りたまへ、その方がいゝんだから」

    「何しに来た!」

    房一はその玄関土間に足を踏み入れて、

    相手はさつきから黙つて、房一と徳次の様子を眺めていた。さすがに気が立つているらしく、節くれだつた手首を食台の上でこねるやうに動かしていた。そして、徳次よりもはるかに手答へのあるらしいこの男が何者か見究みきはめようとして、どこか気を配つた様子だつた。

    房一は熱心に愛想よく椅子をすゝめた。

    「あ、さう云へば」

    房一は慌てて、診察にかゝつた。その後で彼は云つた。

    「あいつも、君んとこと同じで、子供ができたらしいよ」

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