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    「ねえ、御苦労なこつた」

    「先生、どうしなさる?着て行きますかい」

    云ふなり、ごろりと仰向けにひつくり返へると、新聞を持ち上げ、眼をぱちぱちさせ、やがてうとうとしはじめた。すると、面長な、普通よりもよほど大きい練吉の寝顔には、年に似合はない駄々児のやうな表情が浮んだ。

    「をかしいからとは何ごとだ。火事だといふから手伝ひに来たんぢやないか、そして溝に落ちたのが何がをかしいんだ」

    「はゝゝ、でもカワラケにはちがひない、それがかうひよつとね」

    小谷は酔つて来たのだらう、何度も同じ手真似をして見せた。

    この時さう云ひながら座に入つて来た者があつた。それは今泉だつた。

    「あんたは鮒をたべなさるかね」

    「さうですね。さつきからどうもさうらしいと思つていたんですが、失礼しました」

    足が冷えて来たので、風呂の火でも見ようと立ち上つた時だつた、裏口の戸がゆつくりと外から開いた。

    と、盛子は大げさに滑稽な顔をしてみせた。

    「大きに。ありがたうござんす。よろしう頼んます」

    「水神淵を知つとんなさるだらう」

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