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    「買収ですかな」

    「きさまか、鬼倉ちふのは」

    「よし、それでは預つとかう」

    突然だつたので、房一は思はずその醜い顔に紅味をうかべながら、軽く頭を下げた。その拍子にごく自然に眼玉と真向ひになる位置を外した房一は、さつきから気を引かれていた馬の方をちよいちよい眺めやつた。

    「ねえ。――はやく。――患者ですわ」

    どこかで、「営林署だ」といふ声が聞えた。そして、黒い人影は左手へ向けてぞろぞろと走つて行つた。何か叫び声のやうなものがその方で起つていた。

    半ば感心し、半ば疑はしさうに、彼は指を自分の眼に向けてみた。

    「今日からお隣へ参りましたから、よろしく願います。」

    鬼倉は低い声で、はじめてぢつと相手を見た。が、それつきりだつた。動きもしない。徳次は何故ともなく一寸ひるんだ。が、又、

    と、練吉はわざとらしく顔をしかめてみせた。

    別に会ふ気がなかつたから、と云ふ代りに、

    と、練吉は急いで云つた。

    「その首はどんな顔をしていた」と、友達のひとりが訊いた。

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