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    「いや、あの晩の、ほんの三二日前です」

    「ふん」

    「へえ。ちよつとばかし――」

    練吉は軽く頭を下げながら、相手の房一がいきなり直立不動のやうに足をそろへたのを見た。

    「別に何日からでもないんです。今日からでも――」

    「つい今日まで挨拶にも行かずじまひになつてね、どうも済まなかつた」

    こんな風に「円い」――のだらうか。いや、それはどうでもよかつた。盛子はそこに房一を感じていた。それは房一の醜い他の部分を忘れさすに足るものだつた。

    その「含有量」といふ言葉は富田が昨日聞き覚えたばかりのものだつた。

    けれども、私がたいがい徹夜で仕事しており、深夜に入浴したがることを知っているので、気の毒がって、たいてくれる。八時ごろ四十五度ぐらいにしておくと、石の浴槽は冬でも却々なかなか冷却せず、十二時ごろは四十一二度、二時三時でも、三十八度ぐらいである。私は深夜に二度入浴して、頭を休め、冷えた全身をあたためることができる。私はタンサンガスに弱く、たちまち頭がしびれるので、せっかく炭火で室内をあたためても、窓をあけてガスをだすから、常に寒い思いをしていなければならないのである。

    それは正文にかゝりつけの患家だつた。

    と、父親の顎のあたりに又目をつけた。

    「半之丞の子は?」

    むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。

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