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正文は顎をつき出しては一寸笑つて、ふむ、ふむ、とひとりでうなづいていた。
これがこの小さな字である。
「ほう、さうか。それはちつとも知らなかつた」
練吉は軽く頭を下げながら、相手の房一がいきなり直立不動のやうに足をそろへたのを見た。
道平が口をうごかせるまでには随分手まどつた。
これが若し他人だつたら、或ひはかけがへのない一人息子でなかつたら、正文もいさぎよく結着をつけてしまつたらう。「道楽息子」――その一言で済むわけだつた。
「それぢや、向ふの座敷へ行つて少し休みませうか」
「きさま!あれほど云つたぢやないか。何んだこの真似は!」
「射撃たつて、あれはクレーとかいふものを射つんでせう。わたしはね、他に何か的まとでもあるのかと思つたら、何のことはない、小さなカワラケの皿をね、かうひよつと機械仕掛けでとばしてね、――そいつを射つんでせう。なるほどうまい仕掛けにはちがひないが、見ているとあつけないもんですな。それに音だつてね、景気よくないんですよ。ボスツといふやうな音でね」
「え」
一瞬、まはりの者は皆黙つていた。わけを知らないのは今泉だけらしかつた。その意識のために、今泉はひどく大切な物をとり落したときの呆然とした眼で庄谷を眺めていた。もともとどこか空虚な感じのする彼の顔は、眼がとび出して底まで空つぽになつたやうに見えた。
男は眼を閉ぢたまゝだつた。
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