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    もう一月あまり前から気づいていたのだが、はつきりしなかつた。云はうか云ふまいかと迷つていた。たつた今、大きな麦藁帽子の縁で半ば隠されてはいるが、むくれ上つた幅の広い肩がぴよいぴよい目の前を歩いてゆくのを見ているうち、突然云ひやうのない親しさの感覚に捕へられた。打ち明けてみたくなつた。何にも如らないで、こんなに変な風に脚を丸出しにして、私にはおかまひなしに先を歩いている!

    男は一歩下つた。

    「よく来てくれましたな。けふはゆつくりしてもかまはんのでせう。あんたは碁を打ちますか。――さうですか、御存知ないですか。それはちよつと。まア、しかし、こんなものは覚えん方がいゝかもしれませんなあ」

    「ほう。元気だね。ハッパでやられたかね」

    「やあ」

    「もはやお膳も据ゑていたゞきましたし、これで十分頂戴いたしたも同然でありますから、甚だ失礼ながらお先きに御免を蒙ります」

    「え」

    「すみましたよ。さあ。何でもありませんなあ。ぢき起きられますよ。ごく軽いんですからね」

    「ごめん下さい」

    「一つ着て見せたらどうです?高間さんにはきつと似合ひますよ」

    「何しろ、わや苦茶だ」

    「ふむ、トンネルのハッパだな」

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