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その通り、近くに似たやうな河はいくつもあつたが、それは鮒がたくさんとれると思ふと鮎がさつぱり駄目だし、うす濁りがしているし、ずつと先の木ノ川は河幅こそ広く水もたつぷりしているがあんまり大きすぎてよほど上流まで行かないと鮎をとる手立てがない、してみるとやはり、この吉賀川は彼等の口にするごとく「名うて」の川にちがひなかつた。
「坊は?」
と、云つた。
彼はそれを云ひに来たのだつた。
感心したやうに呟くと、房一はくるりと向ふむきになつて歩き出した。
と云ふ疳高かんだかい大きな声があたりに響きわたつて房一を面喰せた。
そこへ房一が帰つて来たのだ。盛子は横坐りの所を見られまいとして慌てて立上つた。
「ふむ、ふむ」
「それでは」
ちょうどその時我々は郵便局の前に出ていました。小さい日本建にほんだての郵便局の前には若楓わかかえでが枝を伸のばしています。その枝に半ば遮さえぎられた、埃ほこりだらけの硝子ガラス窓の中にはずんぐりした小倉服こくらふくの青年が一人、事務を執とっているのが見えました。
一座はしづまり返つていた。何か緊迫した気配があつた。――とにかく、それは予定の中には入つていなかつた。こんな風に突然誰かが立上り、荒々しい声を張り上げ、何を云ひ出すか判らないのにぢつと膝をついて聞いていなければならぬとは!
「どうも、済んまへんでした」
「さういふあんたはどなたで?」
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