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    「あの人はつまりこんな風な人なんだわ。こんな風に――」

    もう一度小学校の校庭まで辿り着いた時には、衣裳がくたくたになつたのと疲労し切つたのとで、行列をつくつて歩いている間に自然と現れていた共通の類似、あの正面を切つたまじめさが消え失せ、代りに日頃のそれぞれな持前が、尖つた顎だの鹿爪らしい顔つきだのいふものが今や歴然と姿を現した。まだ解散にならぬ前から気早やに冠をかなぐり取つた者もいたし、衣裳をぬぎにかゝつた者さへあつた。

    と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、

    「だいぶ、様子が変りましたな」

    と、何か文句にならないことを口の中で云つて、もう一度低いお辞儀をかへした。

    「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」

    「ありがたう。――あ、大きいね」

    と、呟き、房一に向つてしきりとうなづいていた。

    と、房一は加藤巡査に云つた。御苦労だが、加藤巡査には角屋のところで本署の自動車を一先づとめてもらひたい。こつちは自分が引受けるから、こゝへ乗りつけないやうに何とか待たせていたゞきたい、その間にこちらの始末をつけ、自分が責任者になつて出向いてよく話をするから――。

    「つい今日まで挨拶にも行かずじまひになつてね、どうも済まなかつた」

    「ふむ。悧巧者だな、お前は」

    「ね、君」

    「あの人は来まいて」

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